左折禁止の標識
左折禁止を示す標識は、禁止の意味を持つ標識であるが、
その色は禁止を象徴する赤ではなく、許容を象徴する青である。
左折禁止を示す標識は、禁止の意味を持つ標識であるが、
そこには斜線もなく×印もない。
左折禁止という標識はない!?
日本には「左折禁止の標識」はない。
あるのは「指定方向外進行禁止の標識」である。
指定方向外進行禁止の標識のうち、左向きの矢印のないものが左折禁止を意味する。
たとえば、これらはすべて左折禁止の意味を「持つ場合」がある。
左折禁止の意味を「持つ」ではなく、「持つ場合」があると記したことには理由がある。
詳しくは後述するが、これらは左に分岐する交差点に置かれた場合に、左折禁止の意味を持つことになる。
同じ標識なのに意味が違う
左折禁止を示す標識に問題があるとすれば、
何が禁止されているのかが、一目でわからないことだろう。
たとえば、三つ並んだこれらの標識の意味はすべて「左折禁止」の意味を持っている。
手前の二つの標識は予告である。
これが印象に残っていると、
こちらの二つの標識もすべて左折禁止だと勘違いするかもしれない。
実際、私も勘違いしていた。
実は、手前の標識は「右折禁止」、奧の標識は「左折禁止」である。
補助標識の違いから、手前の標識が奧の標識の予告ではないと気づいた。
同じ標識でも違う意味を持つのは、標識が置かれた位置と関係がある(下図)。
このように、標識だけではなく、置かれた場所まで見ないと、何が禁止されているのかわからない。
その点、韓国やアメリカなど海外の左折禁止の標識はわかりやすい。
何が禁止されているのかが、一目でわかる。
左折禁止取り締まり
左折は右折より容易である。
多くの交差点では、直進できるときは左折もできるし、対向車に注意する必要もない。
しかし、左折禁止となっている場所は、街中にあふれている。
どうにも左折できない道
ある幹線道路がある
この道路から左手の住宅街へ行くには、
どこかで左折しなければならない。
いま朝の8時だとする。
この交差点は、住宅街への道が分岐する最初の交差点であるが、
時間帯左折禁止にかかるので、ここからは左折できない。
では次の交差点で左折できるかというと、
時間帯左折禁止の交差点が、最初の交差点を含めて7カ所も連続する。
つまり、7回連続で左折を諦めなければならない。
次に住宅街への道が分岐する交差点となると、ここになる。
最初の交差点からここまで、実に2kmほども離れている。
朝、この幹線道路から住宅街へ「合法的に」入るには、
7カ所の左折禁止すべてに気付く必要がある。
私はこれらの写真を撮るまで、左折禁止がこれほど続くことを知らなかった。
左折禁止がこれほど続くとはあまり知られていないだろう。
そうすると、終日左折を許される路線バスを見て、
その交差点は朝も左折ができると勘違いするかもしれない。
また、広い道が分岐する交差点では、左折に支障がないように見えるために、
終日左折できると勘違いすることもあるだろう。
たとえば、7番目の交差点(もちろん、左折禁止)から分岐する道は、
とても広くて、バスも通っていて、並木まである。
このような道へ左折できないとは思えないだろう。
ちなみに、一番目と二番目の交差点では、左折禁止取り締りが行われる。
どちらも、かなり広い道が分岐している。
このような左折禁止が連続する道路は、意外にあちこちにある。
そして、その多くが、朝や夕方の時間帯に限定した左折禁止であった。
朝夕の時間帯における住宅街への進入は、
規制があるものだと思っておいた方がよい。
左折できそうに見える道
ここも左折禁止取り締まりポイントである。
ここで取り締まりを受ける人が多いのか、
3つも指定方向外進行禁止の標識が並んでいる。
これが左折での進入を禁止されている道路である。
一見して、左折が禁止されているように見えない。
なにしろ、道路自体は対面通行になっているのだ。
停止線も一方の車線だけに施されているし、
進入が禁止された方向に向き合う標識まである(矢印)。
道路自体は問題なく左折できるように見える以上、
標識を見落としてしまったら、確実に左折してしまうだろう。
運転中、信号を見落とすことは滅多にないが、
標識を見落とすことは、よくあると思う。
この取り締まりポイントは、標識を見落とさないことがいかに大切かを思い知らせる。
もう一つ、この交差点には「左折したくなる」わけがある。
ここを左折すれば、その先の交差点の混雑を避けることがでるのだ。
幹線道路を外れると、気を付けなければならない標識を増やしてしまう。
交通違反をしないためには、なるべく規制のない場所を通る方がよい。
むやみに幹線道路を外れないことも、交通違反の防止に有効かもしれない。
複雑な補助標識
運転中のドライバーが標識を見ていられるのは、長くて2、3秒だろうか。
逆に言うと、どれほど複雑な標識でも、2~3秒以内に意味を把握しなければならない。
いま、月曜日の午前8時で、軽自動車に乗っていて、この交差点に来たとする。
左折できるかどうか、3秒以内に判断できるだろうか。
正解は「左折できない」である。
そうでなくても左折禁止の標識はわかりにくい(と私は思っている)のに、
文字でいっぱいの補助標識まで見て、瞬時に内容を把握するのは難しいはずだ。
ちなみに、軽自動車は、この標識の「大貨等以外の車両」にあたる(軽自動車は軽車両ではない)。
よって平日・土曜の7時半~8時半は、左折禁止となる。
指定方向外進行禁止の標識は、このような補助標識のせいで、わかりにくいことがある。
その場合の対処法は、わからなかったら矢印以外の方向に進まないと、心に決めておくことだろうか。
左折禁止の場所がわからない
ここも左折禁止取り締まりポイントであるが、
どこに左折禁止箇所があるのかがわかりにくい、という例である。
まず、この交差点自体は左折できる。
左折すると、すぐに、道が二手に分かれるが、
ここで左折することが禁止されているのである(図の赤矢印)。
ややこしいことに、左折による進入は禁止されていても、
進入自体は禁止されていない(図の青矢印)。
実は、この一帯はロータリーになっている。
先ほどの道路へは、ロータリーを一周してからであれば、進入することができる。
ここで問題となっている道路へ進入する場合、
交差点にさしかかるまでに、進入経路を確実に把握する必要があるが、
それができるかというと、疑問を感じる。
左折禁止を知らせる、あるいは進入経路を知らせる標識は3つある。
①の指定方向外進行禁止の標識は、あらかじめ道路の形を知らないとすぐに理解しにくい。
②のロータリーの案内版は、もっとも詳しいが、それだけに理解に時間がかかる。
③の左折禁止の看板は、街路樹や地下街出入口に隠れていて、左車線からはほとんど見えない。
③の看板には「左折禁止」と大書きしてあるものの、
目の前にある交差点が左折禁止なのではない。
その先の交差点が左折禁止なのである。
ここで左折禁止違反で取り締まりを受ける人は多いという。
しかし、このような場所で間違えて左折してしまうのは、無理もないのではないか。
確かに、運転には注意が必要であるが、法は不可能を強制するものではないはずである。
あまりに通行方法を間違えやすい場所では、人間側に注意を求めるよりも、
行政側で間違えにくい通行方法に改める方が合理的だと思う。
一方で、ドライバーとして、どのような対策がとれるだろうか。
一つには、大きな駅の駅前には近づかないことが有効だと思う。
大規模な駅は、このようなロータリーがあったり、バス以外は進入禁止であったり、いろいろな規制がある。
そうした規制の多い場所には、はじめから近寄らない方がいいのかもしれない。